インバウンド業界の中でも、人の流れを作り出す「移動手段」。
島国である日本は、海外からの移動手段のほとんどが飛行機である。飛行機が飛ばなかったら、外国人は来ることができないのだ。
ということで、コロナの影響を最大限受けているインバウンド業界の中でも、規模も影響力も大きい航空会社の動向を探りたい。
まずは世界から。
4月20日の記事。アメリカの航空会社向けの支援について書かれている。
記事によると、500億ドル(5.4兆円)の支援規模が決定されたが、その条件として、一定の路線と便数を維持することが入っている。この条件により、航空会社はスッカスカの飛行機を飛ばし続けなければいけない。
さらに、補助金の30%は返済し、その10%相当を新株予約券を発行することを各社に求めているという。将来的に、国が航空会社の株を持つ可能性があるということだ。
次の記事は、5月1日にかかれたもので、アメリカの航空会社の厳しい将来を予想している。
特に興味深いのは、以下の部分。
実際のところ、数千万人もの米国の失業者が、近い将来とはいえレジャーのために飛行機を利用することは考えにくい。それに企業はいま、ヴィデオ会議ソフト「Zoom」を使ったコミュニケーションのとり方を学んでいるところだ。
これは全くその通りで、人々は物理的に動かずに人とコミュニケーションを取るすべを習得しつつある。
特に企業において、その便利さと安全性を実感している今、あえて対面でのリスクを取ろうという会社はどのくらいあるのだろうか。最大の収入源となっていたビジネスクラスの客が減る可能性がとても高い。
そして連休のさなか、5月3日のニュース。
投資家バフェット氏が、お気に入りだったエアライン株を、4社(デルタ航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空、サウスウエスト航空)とも全て売却した。
「外出制限が人々の行動に与える影響は分からない。3~4年後に、昨年までのように飛行機に乗るようになるのか見通せない」と悲観的な見方を示した。
90歳のおじいちゃんが3か月前の決断の過ちを認められて偉い! とブコメで絶賛されていたこの記事。確かに偉いが、航空会社にとってみれば深刻な事態だ。
さて、時を戻そう(ペコパ風)。
大手航空会社で最初に破綻のニュースが舞い込んだのは、4月20日。オーストラリアのヴァージンだ。「ついにきたか……」と思った方も多いのでは。
記事によると、もともと低価格を売りにしていてLCCとの価格競争が続き、経営が悪化していたとのこと。
これに対し、中国南方航空と中国東方航空が買収を検討しているという。
それじゃ中国は今どうなっているのかというと、
さしあたり各社が狙うのは、来月初めの労働節の連休に合わせた旅客の取り込みだ。国内線の需要を喚起しようと、複数の航空会社が極端なチケットの割引を実施。野菜並みの値段まで引き下げる会社も現れるなど、メディアでも話題を集めている。
野菜並みの値段て……さすがの中国、ダイナミック。
で、緊急対応レベルが下がって、旅行へGO! という流れへ。
ただし、近場&車というトレンドになっているという。
その他、ルフトハンザがドイツ政府から1兆円、エールフランスは政府や銀行から約8000億円の借入を調整しているという。
さて、では日本はというと。
日本の航空業界は、4月の始めで2.5兆規模の支援を政府に要求している。
航空業界は人件費やリース費用など固定費の負担が重い。減便による収入の激減で、資金繰りが急速に悪化しており、業界内で危機感が高まっている。
先日の記事で紹介した、「Weekly Ochiai」の動画の中でも航空業界について触れられていて、JALの再建も手掛けた冨山和彦氏は「航空会社は毎月数百億~1000億円単位でお金が消えていく」と言っていたが、まさにこの事だろう。
支援策の柱は、民間金融機関からの借り入れの一定枠に政府が保証をつけることで、無担保で融資を受けられるような仕組みを想定。加えて空港使用料や税金の支払い猶予、給付型の助成金といった内容を求める。
(中略)
日本政策投資銀行の融資制度を利用し、3千億円を調達する方針を固めている。長期化に備え、民間金融機関と合わせて1兆3千億円程度の融資枠の設定も求める方針だ。
連休の実績も、前年のひとケタ%。
そんな中、5月8日にANAが来年の採用を中断したというニュースも。
世界中、航空業界はどこも悲惨な状況になっている。
将来的にも、以前ほどの客が戻る見込みも薄く、長期化に向けて期待を手放す動きも始まっているようだ。
となると、大型ジャンボから中型・小型という身軽な飛行機という流れも予想できる。
コロナ以前から「飛び恥」なる単語が欧米を中心に流行しており、飛行機に乗ることがエコではないという風潮もある中で、今後の航空業界はどうなるのだろうか。
島国である日本は、飛行機以外の手段での入国を受け入れる整備を進めた方が良いかもしれない、と思いつつも、航空会社で働く方々にはエールを送りたい。