これからのインバウンド業界を考える

withコロナ、ポストコロナでインバウンド業界はどうなる?

【東京2020】インバウンドの命運がかかるオリンピックはどうなる?

5月6日、ニコ生で安倍総理と山中教授がやり取りした中で、オリンピックについての議論も交わされた。

オリンピック部分について、文字の書きおこしが一番多かったのはこのサイト。

lite-ra.com

(ウルトラCをウルトラQって間違える山中教授、好き。。。)

 

その様子は、すぐさま様々なメディアでも取り上げられている。

www.asahi.com

www.huffingtonpost.jp

 

これを受けて、医師であり医療ライターをしている松村むつみさんは非現実的であると主張。

gendai.ismedia.jp

 

これらの要点をまとめると、

  • オリンピックが来年開催されるためには、ワクチンや治療薬が絶対条件である。
  • 今の段階で既存薬の承認が特例的に認められないと遅い。
  • 5月7日にレムデシビルが特例で承認されたが、「特効薬」とまでの効果があるかは疑問。さらにワクチンの開発には数年かかることもある。
  • 第2波、第3波が来るという予想もあり、新型コロナとは長期的に付き合っていくことになる。
  • 例え日本で封じ込めたとしても、オリンピック開催された場合、いろいろな国から人が来ると日本で感染が拡大し医療崩壊につながる。

 

これらの意見の一方で、オリンピックという巨大なスポーツイベントを運営するにはスポンサーや放映権など、政治的な問題も絡んでおり、そちらの思惑も見過ごせない。

 

これは、オリンピックの延期が決まる前の記事だが、IOCのステークホルダーたちについて触れられている。

victorysportsnews.com

最大でIOCの収入の7割に当たるといわれているのがテレビの放映権料だ。リオデジャネイロ五輪では3000億円に上るといわれる。東京五輪はそれ以上になる。(中略)

さらにIOCの誇るトップランクのスポンサー企業たち。日本のトヨタ、パナソニック、ブリヂストンを含むいずれも世界規模の大企業14社の権料も収入の10パーセント以上といわれ、IOCに大きな影響力を持つ。そして開催都市の東京都、運営主体の組織委員会、税金で万が一を支える日本政府が、東京オリンピックの開催を左右する主なステークホルダーだと思ってもらえればよい。

 

当のIOCは、ウェブサイト上でFAQのページを作成。アップデートもされている。

www.olympic.org

この中で、「誰もがこのパンデミックが制御不能だという中で、なぜ2022にしなかったのか?」という質問があった。

AS NOBODY CAN BE SURE WHEN THE PANDEMIC WILL BE UNDER CONTROL, WHY NOT JUST RESCHEDULE THE TOKYO GAMES FOR 2022?


Our Japanese partners and the Prime Minister made it very clear that Japan could not manage a postponement beyond next summer at the latest. It is a mammoth undertaking, both for the Organising Committee and the country as a whole. First of all, you need to secure the availability of the Olympic Village, since that is at the heart of the Games. The same applies to all the sports venues. Thousands of people will need to carry on working. All the partners, sponsors and regional and local governments need to pull together. Postponement will involve restrictions and compromises on the part of everyone involved. There is no blueprint for postponement, but the IOC is very confident that all the complex parts will come together and give us a marvellous Games.

これに対する答えが「日本がそれ以上の延期ができないと決めた。何よりも最初に、オリンピックの中心である選手村を確保する必要がある。」(赤字部分)との回答。

もちろん、選手村や会場の確保は開催する上で必要不可欠なものであるが、「聞きたいのはそこじゃねーよ」感がすごい。

 

また、大変興味深い記事がAP通信にある。

https://apnews.com/6805bef059a67546f461a354f03ec6f6

(英語だけど翻訳ソフトとか使って頑張って!)

Q: Some scientists are skeptical the delayed Tokyo Olympics can open in 15 months. What are the prospects?

A: Many scientists believe an Olympics with spectators can’t happen until a vaccine is developed. That is probably 12-18 months away, experts say, and then there will be questions about efficacy, distribution, and who gets it first. Kentaro Iwata, a Japanese professor of infectious disease, said last week: “I am very pessimistic about holding the Olympic Games next summer unless you hold the Olympic Games in a totally different structure such as no audience or a very limited participation.” Yoshitake Yokokura, president of the Japan Medical Association, came to the same conclusion in a recent interview. An Olympics in empty venues is looking more likely, which is the scenario for many sports. Fans hungry for some action may have grown accustomed to this configuration by the time the Olympics arrive.

多くの科学者は来夏の開催に懐疑的で、岩田健太郎氏も、無観客または非常に制限された参加者での開催など、今までとは全然違う浩三での開催でない限り悲観的であると言っていた、それには日本医師会会長である横倉義武氏も賛同している、と書いてある。

 

そして延期のための費用について、だれが負担するのか、という質問。

Q; Postponing the Olympics will be costly. Who will pick up the expenses?

A: In two words: Japanese taxpayers. Japanese organizers and the IOC have said they are “assessing” the added costs. They have not ventured an estimate — at least not publicly. (略)

2ワードで非常にわかりやすく説明してくださっている。「日本の納税者」。
そう、我々である。

 

jp.wsj.com

WSJは10名の感染症専門家に話を聞いた。一部抜粋する。

国際保健法に関するWHOの協力センター責任者、ローレンス・ゴスティン氏は「新型コロナの波は2021年になっても続く可能性が高く、大勢の選手や観客を安全に移動、収容する唯一の安全な方法は、有効かつ広く入手できるワクチンで集団免疫を作ることだ」と話す。

「ワクチン開発がどうなるかに左右される。なぜなら、ワクチンは完全に脅威を取り除くことができるからだ」。ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの専門家、アメシュ・アダルジャ氏はこう指摘する。

科学者らの間では、1年~1年半で新型コロナ予防ワクチンの開発・流通を実現するとの見通しは、極めて楽観的だとの見方が支配的だ。

(中略)

マサチューセッツ総合病院の感染症責任者、ロシェル・ウォレンスキー氏は1つの可能性として、大会の2週間前に全員を日本に入国させ、滞在中は毎日検査を行い、帰国前の2週間は隔離を義務づけるといったことが考えられると述べる。そうなれば事実上、五輪の開催期間と宿泊日数は3倍になる。

日本がこれまでオリンピックに対してかけてきた費用は、インバウンド需要を見込んでおり、それはチケット収入の他に、来日に伴う飲食・宿泊・東京以外への旅行などが含まれている。

ジョンズ・ホプキンス大学のクリス・ベイラー教授(疫学)は「テレビ中継を念頭においたイベントになり、対人距離を確保しつつ(コーチや家族など)少数の関係者のみが観戦を許されるか、または無観客で実施される」と予想。「数万人の観客が見守る国際イベントになる可能性は低い」とみる。

 無観客となれば、3480億円相当の国内スポンサー契約に影響が出る可能性がある。日本の主催者は、来年の五輪への関与継続を巡り、スポンサーとの交渉を始めたとしている。

今まで日本がこのオリンピックに対してかけてきた金額は1兆円3500億円。インバウンド需要がこれを回収すると見込んで日本がつぎ込んできたお金だ。

延期に伴う追加3000億円について、安倍総理が同意したと書かれたIOCのウェブサイトがやや炎上し、その文言が削除されたのも最近ニュースになった。

これにより日本国民が「そんなお金オリンピックに使わずにコロナ対策に使えよ」と激オコ、オリンピックに対する負の感情が爆発中ではあるが、我々旅行業界からすると、オリンピックの有無は将来を左右する一大事である。

 

インバウンド業界の動向を見ていると、オリンピックに向けて、とかインバウンド復興に向けてという動きがあるが、最悪のケースであるオリンピックがないことを見据えての動きを取るべきである。

医療関係者、科学者、政府関係者と、引き続き動向を見守っていきたい。